保存したページだけを見せると決めるまで
ArchiveSealは、Webページをそのままの見た目で保存するChrome拡張です。
作りはじめたのは2026年5月24日。もともとは別のプロジェクトにデータを渡す入口を兼ねる位置づけで始まりました。
3日目に、保存したページを開き直す機能を3回作り直しました。4日目に、その系統の機能を全部捨てています。捨てたことで、この拡張機能が何をするものかが決まりました。
何が起きたか
初日に、ページを保存して、まとめて整理して、書き出すところまで一通り作りました。
同じ日に、他の保存ツールと何で違いを出すかも決めています。画面に表示されていない文字まで取り出すことです。
折りたたまれたメニューの中身、読み込まれてはいるが見えていない注釈、画面の外へ追いやられた文字。ページを見ているだけでは気づかないものが、実際にはたくさん埋まっています。それを保存の対象に入れる。
同時に、カード番号のような16桁の並びは保存しないようにしました。取れるものを全部取る作りにすると、取ってはいけないものまで入るからです。
次に作ったのが、保存した一覧から元のページをまとめて開き直す機能でした。あとで見返すとき、保存した記録と生きたページを並べて確かめられます。
ここで問題が出ます。
あるサイトで開き直すと、保存したときとは別のページが表示されました。 一覧の中の特定の項目を指していたはずが、その手前の入口に戻ってしまう。
対処を3回入れました。開いたあとにページの中身を書き換える、書き換えを2段階に分ける、待ち時間を足して4段階にする。3回とも、表示は変わりませんでした。
何を決めたか
① 開き直す機能をやめる
3回目の失敗のあと、実機で確かめた結果が3つ揃いました。
- そもそも届いていない。 ページの中の位置を指す情報は、通信の決まりの上でサーバーまで運ばれません
- サイト側が受け取らない。 こちらが後から書き込んでも、サイトの側がそれを見に行かない作りになっていました
- Chrome自身にもできない。 ブラウザの標準のブックマーク機能でも、同じページを開き直せませんでした
3つ目が決定的でした。ブラウザ本体にできないことを、その上で動く拡張機能ができるわけがない。 ここで、粘る側から降りる側に切り替えています。
② 生きたページに触る機能を、全部消す
開き直しだけをやめるのではなく、同じ系統の機能をまとめて外しました。 一括で開く、一括で取り直す、1件ずつ取り直す、うまく開けない可能性を伝える警告。
理由は、ArchiveSealの本質を言葉にしてみたら、それらが全部その外側にあったからです。
その瞬間のページを保存して、あとで見返す。
保存したあとに生きたページを読みに行ったり操作したりする機能は、この一行に反します。保存した時点と今とで中身が違うかもしれないというのが、そもそも保存する理由なのに、開き直す機能はその違いを消しにいく動きでした。
消した結果、拡張機能が求める許可も減りました。 タブを操作する必要がなくなったためです。機能を足すと許可が増えるのが普通ですが、このときは逆に動きました。
③ 保存したものを見せる画面を作る
外した機能の代わりに、保存した中身をその場で見る画面を用意しました。元のページを開くのではなく、保存した時点のものを表示します。
これは他の保存ツールが共通して採っている形でもあります。生きたページへ飛ぶのは、あくまで補助の動線として残しました。
④ 言葉を変える
拡張機能の中で「ブックマーク」と呼んでいたものを、「アーカイブ」に変えました。
ブックマークは場所の目印で、開くと今のページが出ます。アーカイブはその時点の中身で、開くと保存したものが出ます。作りが変わったので、呼び方も合わせました。
⑤ 別のプロジェクトとの連携を切り離す
5月30日、起点にあった「別のプロジェクトへの入口を兼ねる」という位置づけを外しました。単体で成り立つ拡張機能として進めることにしています。
どうなったか
保存したものを見せる方式に切り替えた直後、保存そのものに欠陥が見つかりました。
実機で確かめたところ、保存した画像の下半分が入っていませんでした。商品の一覧も、店舗の情報も、ページの下部が白いまま記録されていた。
原因は、いまのWebサイトの多くが画面に入るまで中身を読み込まない作りになっていることでした。上のほうだけを見た状態で撮ると、下はまだ存在していません。
一度ページの下まで送ってから撮るように変えました。読み込みが追いつく時間を置きながら、少しずつ下げていきます。
「保存したものを見せる」と決めた直後に、その保存が不完全だと分かったわけです。見せる方式に切り替えていなければ、欠けていることにもっと遅く気づいたはずです。
6日間で、ArchiveSealの性格が変わりました。ページの目印を並べるものから、その時点の中身を丸ごと抱えるものへ。
分かったこと・まだ分かっていないこと
できないと分かるまでに、3回かかりました。
1回目でやめる方法は、いまも分かっていません。3回目で降りられたのは、ブラウザ本体でも同じことができないと確かめたからで、それを1回目に確かめる手はあったはずです。ただ、当時は「やり方が足りないだけ」に見えていました。
分かったことは2つです。
- 何を残すかを決めることは、何を残さないかを決めること。 表示されていない文字まで取ると決めた日に、取らないものも決めています
- 機能を消すと、ArchiveSealの輪郭が出る。 残った機能の共通点が「保存した時点のものだけを扱う」だと、消したあとで見えました
分かっていないこともあります。表示されていない文字を取る機能が、実際にどれくらい使われているかは測っていません。 差別化の核として作りましたが、使う人にとってそれが選ぶ理由になっているかは、確かめる手立てをまだ持っていません。
保存の方法そのものはWebページを保存する方法の決定版に、その時点の記録として残す話はWebページをアーカイブ/魚拓で残す方法に書いています。
この章の更新履歴
- 2026-09-05 初版。着手から、生きたページに触る機能を捨てるまでの6日間を記録
